
ここのお部屋には
とても大切にしたい
宝物を。
あけてしあわせになるどきどきをおすそわけ。
宝箱

『ピンクノイズ』
夏島の夏だった。
木と木の間に張られたハンモックに寝そべって、ゆらゆらとゆられる。ちらちらとおだやかな木漏れ日がまなうらを照らすのが眠気を誘った。緑陰を吹き抜ける風は心地よく、意識はふわふわと浮き沈む。
不意に、カチリとまぶしい気がして、うっすら とまぶたを持ち上げたら、視界はキラキラと金色だった。ひかっている訳でもないのに、その気配はチカチカと明滅するひかりのようにゾロの意識を刺激するのだった。
目を開くとはおもっていなかったのだろう、覗き込む姿勢で男はぴたりと動きを止めて、困ったみたいに青い目を伏せた。一瞬だけ間近に覗き込んだ青は、今日の空の色よりも深く青くて、ああ海を映したままなのだなとおもった。ゾロははんぶん眠りの気配を引きずったままの両腕をゆっくりと持ち上げて、その頭を抱えるように引き寄せると、その眉間の、ぐるぐる巻いた眉毛の端にやわらかくくちびるを押し当てた。寝ぼけてんの、なんてつぶやいて、男はくすぐったがるようにひっそりと忍び笑いをもらした。
ゆるやかに上半身 だけ覆いかぶさる姿勢で、男は暫しじっとしていた。合わさった胸に、自分とは別の拍動がトクリトクリと。
吹き抜ける風にゆれる葉末がひかりをゆらした。刹那の抱擁が解け、不安定なハンモックはゆらりとゆらぐ。ゾロは、ゆっくりとまぶたを閉ざした。
空になった腕に残る微かなぬくもりと不意に掠めた煙草の残り香が、夏の陽射しより熱く、胸を焦がした。
***
2017/08/10
『オサカナブルー』やがわさまより
タイトルは、『ハンモックからのイメージで、ゆらゆら、から、1/fのゆらぎ=ピンクノイズ。』
なんですって。『ピンクのノイズ、という語感がサンジっぽい、』ってほんとに!
素敵な宝物をありがとうございました。